【作成協力&寄稿しました】SVP東京20周年Anniversary Book
先日20周年を迎えたSVP東京。
その20年の歩みを記したアニバーサリーブックの作成をサポートすると共に、「20年の価値」を考察したアーティクルを寄稿しました。
■SVP東京とは何か?
SVP東京、正式名称は、「ソーシャルベンチャーパートナーズ東京」と言います。
「パートナー」と呼ばれるビジネスパーソンが、年間10万円を拠出し、自ら選んだソーシャルベンチャーに最大100万円×2年にわたり資金を提供するという、とてもユニークな団体です。
またその過程では、団体が抱える課題を解決すべく、共に悩み、支援を行います。
言ってみれば、「お金も出し、口も出し、手を動かす」。
そんな大人が常時100名ほど集まる、とっても不思議であたたかなコミュニティです。
■ご依頼いただいた経緯
今回の20周年記念ブック。最初にご依頼いただいたのは、1年半ほど前のことでした。
この20年、確実に価値を生み出してきたと思うものの、成果を振り返り、アウトプットをしたことは一度もないこと。
基本的には自力でチャレンジしたいが、やったことがないので不安であること。
「何がSVP東京の価値なのか?」については、外から客観的に述べてほしいこと。
最初のMTGでは、そんなお話を伺いました。
私自身は、SVP東京のパートナーになったことは一度もありません。
しかし、20年の歩みのうちの、おそらく17年くらい?は、比較的近い場所から、その活動を拝見してきた経緯があります。
例えばSVP東京主催のイベントに登壇者としてお招きいただいたり。
あるいはこちらがSVP東京を取り上げるレポートを執筆したり。
前職のシンクタンク、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに在籍していた頃には、当時の経営層への提案を契機に始まった同社の社会貢献活動「ソーシャルビジネス支援プログラム」のアドバイザー役を、SVP東京2代目代表岡本さん、そして藤村さんに担っていただいたこともありました。
当方が執筆したレポートがきっかけで、あるいは上記のプログラムがきっかけでSVP東京のパートナーになった、という方も今まで数人いらっしゃいます。
とても嬉しく、光栄なことです。
今回ご依頼いただいたレポートは、そんな
「SVP東京の“中の人”ではない」
「けれども全く関係ない他人でもない」
という、ちょっと不思議な、そして「だからこそ担えたアウトプット」だったように思います。
■中核的な3つのコンポーネント
さてさて、そんなこんなでまとめに至った今回の20周年記念ブック、その中身は大きく分けて3つのコンポーネントで構成されています。
1つ目は、20年の歩みを記した年表部分。
2つ目は、パートナーと支援先の双方に行ったアンケート分析
3つ目は、当方からの寄稿文
です。
(その他、支援先一覧や、イベント写真の掲載、アンケートから抜粋した未来に向けたコメントなどもあります。が、ざっくりいうと中核はこの3つかな、と。)
■20年の歩みと振り返り
1つ目の、「20年の歩みを記した年表」部分。
私がかつてSVP東京の15周年の際に集約したスライドはこんな感じのマニアックなものだったのですが、今回の20周年記念ブックでは大局的に、でも写真やコメントなども入れて歩みとカルチャーが伝わるよう工夫されています。
■投資・協働先&パートナー向けアンケート
2つ目の、「パートナーと支援先の双方に行ったアンケート分析」部分。
このパートでは、設計や分析へのアドバイスを担いました。
アンケートのフォーム作成と集計は、SVP東京パートナーの編集チームの皆さん、特に現共同代表でもある神代さんやベスさんがかなり頑張ってくださいました。
私は主に、「何をどう聞くべきか」「得た素材をどう解釈すべきか」のアドバイスと分析、それを表現するための文言整理を担いました。デザイナーさんとのやり取りを含めて、きっと編集チーム(特に作成のけん引役を担った神代さん)はとても大変だったと思います。
本当にお疲れ様でした…!
■寄稿「SVP東京 20年の価値」の振り返り
さて、そして肝心の寄稿部分について、です。
今回、このアーティクルを書くにあたり、SVP東京初代代表の井上さん、2代目岡本さん、3代目藤村さん、そして4代目は共同代表のうち神代さんにお話を聞かせていただきました。
私自身は、それぞれの皆さんと、SVP東京以外の場面でも色々とお世話になっておりまして。
SVP東京を始める、あるいは関わってから、代表を交代するまでの物語を聞かせて頂く場面が無いわけではなかったのですが。
今回お話を伺って、改めてSVP東京というコミュニティの生み出した価値と、それが関わる全ての人にもたらした変容について、深く考えさせられました。
そして書いた寄稿がこちら。
4人の新旧代表にお話を伺い、「SVP東京が生み出した価値とは何か?」を自らに問う中で出てきたのは「コモンズ」という言葉でした。
SVP東京のミッションのひとつは「パートナーの学びや成長に向けた“道場”としての役割」だと言います。
でも私には、SVP東京が20年という歳月をかけ、結果として育んできたのは、「道場」というよりある種の「コモンズ」だったように感じられたのです。
ですので、レポートにはこんな風に書きました。
—–
▼「道場」であり「コモンズ」
SVP東京は2つのミッションを持つ。1つは協働先の成長を通じた社会的インパクトの創出、もう一つはパートナーの学びや成長に向けた「道場」としての役割の提供だ。
「道場」という言葉には、自分と向き合い、スキルを磨くニュアンスが含まれているのだろう。
しかし筆者には、SVP東京が20年という歳月をかけ、結果として育んできたのは、ある種のコモンズだったように感じられる。
パートナーは、自らのリソースを持ち寄る。コモンズでは協働先の成長や社会的インパクトという「実り」をともに喜び、春になればまた新たな種を蒔く。新たにコモンズを訪れる者もいれば、次の場所に旅立つ者もいる。Vチームではなく、SVP東京の運営に携わることで、コモンズそのもののメンテナンスに勤しむ者もいる。そして時々集まり、変化や心情を語り合う。
こうした営みの中で、大切にしたい価値観や暗黙のルールがコモンセンスとして育まれていく。象徴的には、協働先に対するリスペクトや自らのコミットメントを前提とする文化、多様な価値観に対する寛容性などが挙げられるだろう。
▼ 変わらぬミッションを、そして進化を
20年の時を経て、SVP東京はどこに向かうのか。アンケートやインタビューでは、変化を求める声も、「そのままで」という声も聞かれた。おそらくどちらも正しいのだろう。
重要なことは、コモンセンスを大切にすること、そして育まれたコモンズをメンテナンスし続けることではないか。“How”を変えても、そのスタンスが変わらなければ、SVP東京はSVP東京らしく、進化し続けるのだろうから。
■「20年」という月日から思うこと
今回、「SVP東京の20年を振り返り、その価値を言語化する」という、極めて大切な役割を託して頂きました。
SVP東京に関わったパートナーは累計で423人。投資総額は1億1,700万円にのぼります。
そこにあるのは、20年という月日の積み重ねと、「実践のかたまり」です。
20年の長きにわたり、投資と協働が続いたのは、SVP東京に集う方々の、数えきれない努力と時間の投下があったから。
プロボノという性格上、その時間は時に細切れだったり、その努力が検討はずれだったこともあるはずです。
69団体との協働には、紆余曲折もあったはずです。うまくいったことも、いかなかったこともきっとあったのでしょう。
しかし改めて眺めてみると、そこに存在していたのは人と人とが真剣に向き合い、議論を重ねてきたからこそ生まれた極めて豊かな時間の流れとダイナミズムだったように思います。
そしてそのダイナミズムによって、少なからぬ人が、自分の人生を振り返り、自らを変容させていった。そんな歴史がSVP東京の20年には詰まっているように思うのです。
「続く」ということは、そこに何らかの思いがあり、願いがあり、時間の積み重ねがあったから。
私自身は、内部でもない、でも遠くからではない場所から、その実践と積み重ねた時間を、言祝(ことほ)ぎ、弔い、次のステージに送る儀式を行っていたように思います。
編集チームの皆さんとやり取りをしながら、ヒアリングを通じて4代表にお話を聞きながら、そして寄稿文を書きながら、そんなことを行っていたように思うのです。
そんな、SVP東京の20年にわたる実践を詰め込んだアニバーサリーブック。
みなさまぜひ、お手に取ってお読みいただければ幸いです。
SVP東京 20周年特設サイト
https://svptokyo.org/20th-anniversary/
S V P 東京2 0 周年記念ブック
(2024年11月発行)
https://svptokyo.org/wp-content/uploads/2024/11/SVP_20thBook_202411.pdf
「SVP東京 20年 の価値」(執筆:株式会社風とつばさ 水谷衣里)
1.日本初のベンチャーフィランソロピーとして
2.時代を先取りする存在としてのSVP東京
3.協働先にもたらしたもの~成長を支える存在として
4.ビジネスセクターへの波及
5.パートナー自身の変容と、結果としての人材輩出
6.何が変容をもたらしたのか?
7.「道場」であり「コモンズ」
8.変わらぬミッションを、そして進化を