楽天ITスクールNEXT/高校生の学びを大人が支えるということ
風とつばさのお仕事でご一緒させて頂いている楽天株式会社さん。
世田谷区に本社を持つ、日本発のグローバルカンパニーです。
昨今のグローバルカンパニーに相応しく、実に多様な社会貢献活動を行っている楽天さんですが、先日、楽天史上初となるこちらのイベントで登壇させて頂きました。
楽天Impact Days of Optimists(通称:楽天IDO)について、公式パンフレットからの説明は以下の通りです。
楽天IDOとは、楽天が取り組むソーシャルインパクトの祭典です。
Impact Days of Optimistsをコンセプトに、楽天が取り組むプロジェクトを発信し、パートナーの皆さまとつながる場をつくります。
高校生と共にテクノロジーで地域の未来をつくる「Rakuten IT School NEXT」、社会起業家と楽天社員が協働する「Rakuten Social Accelarator」という2大プロジェクトの成果を発表すると共に、地域、ソーシャルを軸にした各種セッションを行います。
本記事では、楽天IDOの1日目に開催された「楽天 IT School NEXT」の様子をレポートします。
■楽天ITスクールNEXTとは
楽天ITスクールとは何か。
まずは公式webサイトでの説明文です。
「Rakuten IT School NEXT」は、次世代を担う高校生が、3日間のワークショップで楽天社員・地域の方とともに、地域の未来について考え、テクノロジーを活用しながら、2030年の未来を作るアイデアを立案します。
その後、アイデアを実際に試してみることで検証・改善し、活動の成果を校内発表会および東京での成果発表会で報告します。
もともと「楽天ITスクール」として行われていた取り組みを発展させ、「IT School NEXT」として2年前にリスタートされたとのことです。
私なりの理解ですが、このプログラムのポイントは、
- 高校生が
- 楽天の社員有志の皆さんと一緒に
- 自分の力で「2030年の未来」をつくるアイデアを考える
という点、そして何より
- 地域の大人たちの力を借りながら
- チームで実際にプロジェクトを進める
という点だと思います。
■今回の役割
今回の私の役割は「審査員」です。
高校生たちは、ITスクールがスタートした8月から自分たちで地域の課題を探し、その解決に向けた試行錯誤を重ねてきました。
私は成果発表会当日、その「プロセスと結果」を6名の審査員の一人として聞かせて頂き、コメントやアドバイス、審査をするという役割を担いました。
■参加した学校
今年度の楽天ITスクールには、全国から10の高校が参加していました。
具体的に参加された学校の一覧はこちら。
離島なども含む、いわゆる「条件不利地」「高齢化・人口減少」「過疎」にある学校が大半を占めます。
今回の成果発表会に参加されていた生徒さんたちは、各校でのプレゼン大会を経て選抜された代表チームとのことです。
数にして、およそ100人くらいでしょうか。
加えて
- 高校の先生方や、
- 自治体の職員の皆さん、そして
- 半年間のプロジェクトに伴走された楽天社員の皆さんや
- 関心をもつその他の社員の皆さんなど
が集まり、大変盛大かつあたたかな場となりました。
■成果発表会の様子
成果発表会では、まず高校生のチャレンジに伴走した楽天社員が、高校生へのエールを伝えます。
そして高校生の皆さんが、舞台の上でプレゼンテーションを行います。
プレゼンテーションは、それぞれのチームごとに工夫が凝らされていて、実に楽しい内容でした!
- プレゼンの途中で衣装を変えて寸劇をするチーム
- 撮影した動画を流すチーム
- 模型や小道具持参でプレゼンするチーム
- 大人に負けじとばしっとスーツ姿で登場するチーム
(ちなみにスーツは全て楽天社員さんから借りたものだとか)
など、そのスタイルは多種多様です。
そうそう、YouTuberデビューしていた高校生もいましたよ!
■何がどうして胸を打ったのか
今回の成果発表会、とても楽しく、そしてとても胸を打たれる内容でした。
「楽しい」と感じた理由は上述の通り。どの提案もそれぞれに工夫が凝らされていたからです。
また時に突飛とも思える提案だったり、思わずクスリと笑ってしまう場面や、高校生らしい可愛らしさ(迸るドキドキ感!)を感じる場面もありました。
また、どの生徒さんたちも、
「自分たちの力で変えられることは何か」
「自分たちの街や村、集落に、どんな未来を生み出したいのか」
極めて真剣に考え、プレゼンテーションをして下さいました。
その様子はおしなべて皆真剣で、この日のための本当によく練習したんだなと思わされました。
でも、そのこと以上に胸を打たれた理由、それは、
- 今回の提案の多くが地域での実際のアクションを伴っていること
- アクションを通じて地域の大人たちと出会っていること
- 地域の大人たちが、それに応える様子が伺えたこと
- その試行錯誤のプロセスと、出来たこと、出来なかったことを率直に高校生が述べて下さったこと
の4つです。
高校生が地域に出て、大人に会い、自分の考えを伝えて行動する。
その過程で悩んだり励まされたりしながら、何かを形にしていく。
そのことが本当に尊く、素晴らしいことだと感じました。
■Impact賞を受賞した久米島高校
例えばImpact賞を受賞した久米島高校。
久米島高校のテーマは「2030年 久米島の伝統文化」でした。
彼女たちが目をつけたのは、沖縄の文化の象徴の一つである三線(さんしん)。
そしてステージに上がった彼女たちが身にまとっていたのは久米島の伝統の象徴ともいえる「久米島紬」でした。
重要無形文化財にも登録されていて、500年もの歴史がある久米島紬はとても高価なもの。(参考:http://www.town.kumejima.okinawa.jp/sightsee/kumejima/index.html)
その紬はなんと、彼女たちの気持ちに応えようと、島の方々が貸して下さったものだと言います。
その話を伺うだけでも、彼女たちの半年間の試行錯誤が、いかに島の方々に支えられてきたのかを伺い知ることができると感じました。
※注:成果報告会では、大賞のほかに
・Innovation賞
・Impact賞
・Technology賞
・Student賞
という4つの賞が授与されました。Student賞は高校生の皆の投票によって決まり、その他は審査員の合議により決まる形です。
私はImpact賞のプレゼンター(トロフィーや賞状、副賞などを授与する役割)を担わせて頂きました。
Impact賞を受賞したのが沖縄県立久米島高等学校です。
■技術を教える場ではない「ITスクール」が高校生にもたらす価値
会場で高校生たちにお話を伺ったところ、生徒の皆さんからは
- 東京は初めて
- 東京の大きな会社に来ることができて嬉しい、でもとても緊張している
- 二子玉川ってどこ?って思った
- 学校の代表だから、みんなの分まで頑張りたい
といった声が聞かれました。
高校生からすれば、楽天のような大きな会社の社員の方とコラボレーションすること自体がとても希少な経験だったんだろうなと思います。
その気持ちは、私も地方出身者なのでとてもよくわかります…‼‼
そして、「ITスクール」という言葉の響きから想像する、「技術を教える場」を遥かに超える場となっていたことも、驚きでした。
「課題を見つけるところから始める」という、学ぶ上でのあるべき形を追求されているなあと感じました。
楽天の社員の皆さんからは、
- 最初は「何か教えなきゃ」と思っていたけれど、話してみたら高校生たちの方が発想が豊かだった
- 自分たちが地域の課題を教えてもらった
- 高校生たちがとにかく一生懸命で心打たれた。応援することが楽しかったし、地域を元気にするってこういうこと(=何かを始めようとする人を応援すること)なのかもしれないと思った
などの声を伺うことが出来ました。
高校生にとって、ITスクールNEXTがどんな意味を持ったのか。
それはきっと何年か経った後にはじめて本当の意味がわかる(高校生自身にとっても、主催者である楽天さんにとっても、社員の方にとっても)ものなのだと思います。
しかし、「審査員」という立場で関わらせて頂いて、少なくとも私自身は東京と地方、地域を超えて、所属を超えて、年齢を超えてコラボレーションすることのエネルギーや価値を、改めて感じさせられました。
そしてこういう場にこそ、本当の学びの源があるのではないかと感じました。
自ら課題を見つけて、問いを立てて、仲間や立場の異なる他者と対話しながら、正解のない答えを探していくことの面白さ、大変さ、そして素晴らしさを感じる時間でした。
そしてその場を一つの企業が生み出し、続ける努力をされていることが、本当に素晴らしいなと思ったのでした。
高校生の皆さん、楽天の皆さん、素晴らしい時間をありがとうございました!