SVP東京15周年スペシャルダイアローグ(渋谷のラジオ編)“寿ぎと言祝ぎ、弔いと感謝”を可視化する
前編、後編と続けて投稿した、SVP東京の15周年スペシャルダイアローグ。
最後は「渋谷のラジオ(特別編)」をお届けします。
このブログ上で何度かポストしていますが、第1火曜日は「渋谷のラジオ」にパーソナリティとして出演しています。
ラジオ出演は、NPO法人マドレボニータの吉岡マコさんからのお誘いで始めたものです。
(番組の枠全体は、NPO法人サービスグラントの嵯峨生馬さんがオーガナイズして下さっています。)
渋谷のラジオ、最初はゲストとして呼んで頂いたのですが、その後、パーソナリティ役をお引き受けすることに。
(マコさんの番組にゲストとしてお邪魔した際のブログはこちら。)
普段はマコさんが偶数月、私が奇数月と交代で出演しています。
今回は「特別編」ということで、1月20日(日)に開催されたSVP東京の15周年トークイベントを振り返りながら、マコさんと私の2人のトークセッションを行いました。
ラジオはここからお聞き頂くことができます。
渋谷のラジオ「渋谷社会部」
https://note.mu/shiburadi/n/nb9ada020a07a
ここではトークをしながら考えたこと、振り返りながら思ったことを3点に絞って、記しておきたいと思います。
■1:自発性・内発性はどうして生まれるのか
一つ目は、「自発性・内発性はどうしたら生まれるのか」ということです。
SVP東京の場合、自ら身銭を切って10万円を拠出した人が「パートナー」となり、ソーシャルベンチャーの経営支援に参画します。
これは、パートナーの自発性がなければ維持されない仕組みです。
- 資金を提供して、SVP東京のコミュニティの一員になるぞ、という意思。
- 自らが共感するソーシャルベンチャーの、基盤強化にコミットするぞ、という意思。
そのどちらもがあって初めて、SVP東京という機会を活かすことが出来るのだと思います。
しかし、自発性はとこから生まれるのか。
おそらく最初のトリガーは
- 課題への共感(ソーシャルベンチャーが解決を志す課題や生み出そうとする価値に共感できること)
- 人への共感(取り組む人や組織への共感、共鳴)
の2つではないかと思います。
そして、自発性が維持されるために、大切なことは「役割があること」ではないかと思います。
この3つがそろった時に、内なる自発性が刺激され、コミュニティへのコミットメントが生まれるのではないか、それは、SVP東京という場に限らず、共感で維持されるコミュニティに共通するものなのではないか、そんなことを考えました。
■2:DNAと動的平衡
二つ目は、DNAと動的平衡です。
SVP東京の場合、ソーシャルベンチャーへの支援は最長2年と決まっています。
パートナーになるには、年間10万円の資金拠出が必要です。
当然ながら、年度が変われば卒業する方が出てきます。つまり組織の中は常に新陳代謝が続いている状態です。
しかし、根本的な組織文化は変わらず維持されています。
このことを考えたときに、出てきた言葉が「DNAと動的平衡」でした。
(ここでいう動的平衡とは、「物体が絶え間なく動き、入れ替わりながらも全体として恒常性が保たれていること」を指します。)
私たちの身体は、髪が自然に生え変わったり、皮膚が自然に老化と再生を繰り返し、常に入れ替わっています。
細胞は常に入れ替わっても、私は私です。つまり「動的平衡」が維持されている状態です。
でも長い目で見るとやはり変化もしている。15年前の「私」といまの「私」は同じ人間であり、違う人間でもある。
今回、SVP東京の15年の歴史を外側から振り返っていて、15年前と「変わらないけれども違う」、「違うけれども変わらない」ということを感じました。
DNAが維持され、新陳代謝が起こり、動的平衡が維持され、そして成長の軌跡も感じる。
良い組織とは、もしかしたらそういうものなのかもしれません。
■3:健全なリーダーシップを発揮するために
マコさんは、イベント当日も、渋谷のラジオの番組内でも繰り返し、「誰もがチェンジメーカーになれる」という表現を使われていました。
ここでいうチェンジメーカーとは、ソーシャルベンチャーの経営者のことだけを指すわけではありません。
今回で言えば、SVP東京のパートナー、すなわち「経営支援を行う側」も、チェンジメーカーです。
チェンジメーカーが、持続的な志を維持するためには、自らの内発的な欲求に基づいて行動すること、そして健全なリーダーシップを発揮することが大切なのではないか。
では健全なリーダーシップはどうしたら醸成されるのか?
その話の中で、マコさんから頂いたキーワードは「empathy」と「self-compassion」でした。
自分なりに理解すると、内発的な欲求に基づいて行動している自分自身を慈しみ、長い道のりの中で、歩みやプロセスを時折確認すること。
事業の成功や失敗を、自分自身の存在と過剰に同一視しないこと。
その先に、健全なリーダーシップが生まれるのではないかと思うのです。
■寿ぎと言祝ぎ、弔いと感謝
最後に、自分が何を考えて、登壇したかを記して一連の振り返りを終えたいと思います。
それは、「寿ぎと言祝ぎ、弔いと感謝」です。
前編・後編で記した通り、今回のイベントで、私は、
「日本と世界の変化を振り返りながら考えるSVP 東京が日本にもたらしたインパクト」
をお話しました。
講演で伝えるべきこと(第1の目的)は、タイトル通りの内容であるわけですが、私としては、加えて「“寿ぎと言祝ぎ、弔いと感謝”を可視化すること」をもう一つの目的に置きました。
「ことほぎ」という言葉は、「寿(ことぶき)」の語源だそうです。
「言祝ぎ」とも書きます。
文字通り、言葉にして祝うこと、です。Celebrationですね。
一方、「弔い(とむらい)」という言葉は、失ったものを確認し、その悲しみを慰める行為を表します。
「弔い」は「訪い」という漢字と共通の語源を持つとのこと。
「訪い」は「とぶらい」と読むそうです。
そしてこの言葉は、「残されたものや人」が、「失ったものや人」のもとを訪れ、その喪失を確認する行為を表すそうです。
あくまでも私なりの解釈ですが、「弔う(訪う)」場を設けることで、弔い(訪い)の対象が昇華され、残されたものの心象の中に生き続けていくことを指しているのだと思います。
そして、言祝ぎと訪いは、どちらも手放しで喜んだり、悲しんだりするものではなく。
どちらかというと
「これまで色々あったね。これからもきっと色々あるよね。でもここにつくってきたプロセスはしっかり存在するから、積み重ねを確認して、この先もきっと出来ると信じることにしよう」
という、プロセスの確認、そしてメタ的認知を伴いながら、次に踏み出すことを意味するのではないか、とも思うのです。
第1部の終わりに、SVP東京の初代代表の井上さんが、本当に喜んで下さった様子で、声をかけて下さいまして。
「ありがとう、本当に嬉しい」、と。
そして、
「トランジションの前には、エンディングが必要なんだよ」、と言って下さいました。
その一言は、「寿ぎと言祝ぎ、弔いと感謝を、(大変勝手ながら)伝える場にしたい」という、私の気持ちとぴったりと符合するものでした。
ビジネスパーソンとしてのバックグラウンドを持ちながら、一個人としてリーダーシップを発揮すること。
課題と人に共感し、課題解決と価値創造に参画すること。
それを可能とする場を作り出したSVP東京という存在は、本当に貴重な存在なのだ(15年前はもっと貴重な場だったのだ)と思います。
そのことを15周年という節目、
そしてSVP東京の歴史で初めて、3代の代表が勢ぞろいした場で、言葉にして、共有し示すこと。
その役割の一端を担えて、本当に嬉しい時間になりました。
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渋谷のラジオは以下からお聞きいただくことが出来ます。
よろしければぜひ、お聞きください。
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渋谷のラジオ「渋谷社会部」
【出演】
吉岡マコさん(認定NPO法人マドレボニータ 代表)
水谷衣里(株式会社 風とつばさ 代表取締役)
https://note.mu/shiburadi/n/nb9ada020a07a