クラウドファンディングを単なる資金調達に終わらせないために
少し前に、
「中小企業にとってクラウドファンディングが成長の機会になる3つの理由」
というタイトルで記事を書きました。(記事はこちら。)
で、その後実際に、「地域創生クラウンドファンディング活用推進フォーラムinあいち」に登壇し、
フォーラムの間中、結局クラウドファンディングの意味や意義って何なんだろう、と考えていまして。
思ったことは、結局クラウドファンディングの意味って、
-価値の見える化
-信頼の可視化
-チャレンジャーを応援する効果
に集約されるんじゃないかと思ったわけです。
セミナーでしゃべったことや手元でメモしたことを基に、少し解説を試みます。
〈セミナーの様子です〉
■「価値の見える化」という効果
前回記事にも書きましたが、クラウドファンディングを成功させるためには、
-自社や商品の「強み」や「魅力」を理解し、
-言葉や数字で示し、
-それを伝える努力をする
ことが必要になります。
つまり、「○万円、○百万円集める」という目標を達成するためには、
「自分たちの商品やサービスの価値を見える化」して、さらにはそれを説明しなければいけない。
とても面倒なことでもあるわけですが、
それが、単なる資金調達を越える(ステークホルダーを増やしてもトライする価値のある)、クラウドファンディングの意義だと。
事業者側が、自らの価値の見える化を試みる機会としてクラウドファンディングによる資金調達の機会を使えると、利用する意味があるのではないかと思います。
例えば事業者さんのうちの一つ、「天ぷらファンド」さんは、これを機に売上が大幅UPしたとのこと。
愛知県事業ということで、露出効果もあったのでしょうが、市場内の、地魚を使った天ぷらやさん、という切り口は面白いし、宣伝効果があったわけですね。
(ちなみにこの天ぷら屋さん、試しに食べに行ってみましたが、本当に美味しかったです。)
■「信頼の可視化」という効果
クラウドファンディングは、自分たちの周囲の支援者を棚卸する機会になると思います。
大げさに言えば、「信頼を可視化する機会」ですね。
クラウドファンディングにトライしたことのある皆さん、
プロジェクトを立てて、ウェブサイトにめでたく掲載されて、さあお金を集めるぞ、という局面で、
まずは今までの支援者に「宜しくお願いします!」と、寄付や投資のお願いをしますよね。
きっとどきどきしながら、SNSで拡散したり、メールや電話でお願いしたりしているはずです。
これって、事業者にとっては実はとても怖いし緊張すること。
なぜならば、今までの事業成果や事業の将来性、はては人柄まで含めて、信頼の蓄積や可能性への期待が可視化されてしまうものだからです。
しかもオンライン上に、多くの場合は「○%達成!」という表記とともに、資金調達の達成度まで公開されます。
だから「怖い」という表現は、寄付型・購入型も含めて、クラウドファンディングにトライしたことのある方ならば、頷いて頂けるのではないかなと思います。
私自身も、「さあ今日からクラウドファンディングスタート」というタイミングで、『いやいやあなたなら大丈夫でしょう』、っていう事業者さんから不安げな相談の電話をもらったこともあります。
結局それって、活動に対する、あるいは事業に対する信頼のバロメーターとして機能する、って、本能的に感じているからなんですよね。
でも、だからこそ着実に良い商品・良いサービスを生み出すことにトライしている方こそ、
ここぞという時に挑戦して、自分たちの周りにどんな支援者がいて、どんなふうに支えられているか考える機会として活用し、そしてそれをPRする機会にして欲しいな、と思うわけです。
活動を振り返り、支援者を棚卸しして、該当するプロジェクトだけではなくて、その先にも繋がる支援者にする。
そういう機会として活かせれば、コストかけて資金調達する価値があるんじゃないかと思います。
■「チャレンジャーを応援する」という効果
クラウドファンディングの究極の機能って、チャレンジャーを応援する機会になる、ってことだと思います。
共感に支えられているからこそ、投じられるお金だと思うわけです。
むろん、無謀なトライは禁物ですし、案件の確実性や、逆にユニークさやエッジも含めて、お金を投じる価値を見極める力量が投資家・寄付者には求められるわけですが。
でもこうやって、クラウドファンディングのプラットフォームが爆発的に広がり、案件を組成する側も、お金を投じる側の双方の利用者が増える理由は、
チャレンジする人をお金を介して応援するという機能が、社会に受け入れられている証拠だと思うのです。
〈セミナーでは登壇された事業者さんの商品も展示されていました〉
さてさて、最後に。
■案件発掘における地元金融機関との連携意義
フォーラムを聞いていて、クラウドファンディングの案件発掘に、地域金融機関が果たす役割は大きいなと。
これはマイクロ投資ならではの面もあるかとも思いますが、
フォーラムでの報告者の方(愛知県施策をつかって資金調達を行った事業者さん)のうちの2社は、
地元金融機関(第三銀行と百五銀行)から、ミュージックセキュリティーズ社さんのことを聞いた、とのこと。
(フォーラム内でもそのように報告されていました。)
どちらの例も、比較的若めの行員の方から提案されたそうです。
実際、MS社の小松社長も、フォーラムの基調講演やその後のパネルディスカッションの中で、案件発掘における金融機関との連携意義を説かれていました。
金融機関が自らリスクを取り、資金供給できればそれに越したことはないだろうけれど、
そして金融機関のそうした変化も期待しつつも、
でもお取引先のチャレンジを、何らかの手段を使って応援しよう、というトライは素敵だなと思うわけです。
特に、地元金融機関の若い行員の方が、社長に「これ使ってみませんか?」と提案したのだというエピソードは、なんだか意味深い。
あ、おまけです。
クラウドファンディングに関するレポート、過去に会社のウェブサイトから発行したものがこちらにあります。
総論がこちら。
http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/search_now/sn140707
実践編がこちら。
http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/search_now/sn140708