NPOやソーシャルビジネスが成果志向になるために(後編:負のサイクルをどうひっくり返すか)
前編では「NPOやソーシャルビジネスが成果志向になることを阻害する3つの要因」を挙げました。
さて後編。ではこの負のサイクルをどうひっくり返すのか。
前編で「ペーパーへのこだわり」、「形式主義」、「コミュニケーションの不足」と書きましたが、これを脱却するために「先行モデル」をつくることはとても有効だと思います。
助成金・補助金の申請フローに、形式主義から脱却できる仕組みをインストールする。
推進会議フォーラム内でも、あいちコミュニティ財団が行ういくつかのプログラムでは、申請提出後、事務局からフィードバックするサイクルを作っている、という発言がありました。
自分自身が関わる世田谷まちづくりファンド・キラ星応援コミュニティ部門は、一次審査で「宿題」を出し、最終選考会に向けてメンターと共にその宿題を解決してもらう制度設計にしました。
こうすることで、プロセスを踏むごとに客観的な目が入り、達成目標もだんだんと明確になっていきます。
これ、もちろん手間も時間もかかります。だから全てに当てはまるソリューションではないかもしれない。けれど、応募→審査→採択→実行のプロセスそのものを改善し、その中にゼロか100か、白か黒か、で終わらないコミュニケーションの機会を入れることが大切なのではないかな、と。 そういう先行モデルを少しずつ作り出せたらいい。
2.知恵を共有すること
採択⇒即執行、ではないフローを模索している例って、案外あると思います。
世田谷の仕組みを作るときに、先ほどのあいちの例はもちろん、例えばSVP Tokyoさんが取り組んでいる、時間をかけた丁寧な採択プロセスやハンズオン型の仕組みなどなども大いに参考にさせてもらいました。
それから社会的インパクトを測って団体の事業改善に繋げている例も少ないけれど存在する。
(こちらは、いまそういう調査少ししているので、また公表されたらブログに上げたいと思います。)
大事なことは、その知恵や工夫を共有していくこと。
3.優良例を積極的に褒め、伝えること
前編でも書きましたが、NPOやソーシャルビジネス側には、評価や振り返りをする余裕があんまりないんですよね。日々本当に試行錯誤の連続ですし、少ないリソースで踏ん張っている団体も多い。
だからこそ、「成果志向になったことで、事業のインパクトが高まった・改善に繋がった」という実態をケースとしてもっと伝えていく必要があると思います。 そしてみんなでちゃんといいね!と言う。
お金の出し手(助成金や補助金を出す側ですね)にも、評価や振り返りをすることで、団体の底力が上がっていくんだ、という認識を持ってもらえるといいな、と。
4.負担を押し付けない仕組みをつくること
振り返りや評価って、それなりに手間がかかります。
負担感を減らすためには2.の知恵の共有が必要。それに3.に書いたように団体側に「成果志向になることは、結果として資源を引き寄せるんだよ」、っていうことを認識してもらうことが大切だと思います。
結局ね、「成果志向になる」→支援者とのコミュニケーションがしやすくなる≒事業を行う上でのハードルの越え方を見つけるきっかけが出来る、ということが、お金を出す側も貰う側も腑に落ちるかどうか、だと思うのです。
(後半のスライドはこちら)
このフォーラム、「成果志向の補助・助成金推進会議 in あいち」はまさに「負のサイクルをひっくりかえすための、地域での知恵の共有の仕組み」だと私は感じました。
NPOやソーシャルビジネスにお金を出す側が中心となったネットワークって、例えば協力して助成プログラムの説明会を行う、なんていう試みはちらほらあるけれど、ノウハウそのものを共有する、しかも地域で、というのはとてもレアだと思います。
そういう意味でも、この先にとても期待したいし、楽しみだな、と思った2時間でした。