日本承継寄付協会(承継寄付診断士・一級講座)にて、講師を務めました
日本承継寄付協会さんが開催する講座にて、講師を務めました。
日本承継寄付協会とは、「遺贈や財産の様々な承継方法を支援する窓口」とのこと。
承継寄付の専門家を育成する「承継寄付診断士」1級講座の講師として、お招きいただきました。
承継寄付診断士
https://www.izo.or.jp/consultant/
承継寄付診断士は、お客様の意向に沿った形で寄付を実現させるための支援を行い、お客様の想いと財産を次世代に繋ぐために必要な能力を身に付けるための専門資格です。承継寄付診断士講座は寄付の専門家として次のような知識を身に付けることを目的としています。
本講座は、士業の皆さま(司法書士や会計士、税理士、弁護士等の専門家の方々)を中心に、遺贈寄付に関わるさまざまな属性の方が受講されているそうです。
私は「日本における社会課題の現状と、寄付が果たす役割」というテーマでお話しをしました。
意識していたのは、
- そもそもなぜ、遺贈寄付なのか?
- 寄付という財源が果たせる役割は何なのか?
- 民間公益活動に寄付をすることが、何につながるのか?
- ガバメントセクターやコーポレートセクターが果たす役割との違いは何か?
といった点を、受講生の皆さんにお伝えすることです。
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「寄付」という手段が社会に果たせる役割は非常に大きいです。
民間公益活動に関する寄付で言えば、特に
- 政策的な位置づけが曖昧で、税を財源とするサポートが期待できない分野や
- 制度や政策の狭間にある事象、受益者が少なく声が届きにくい分野
などにおいて、欠かせない財源だと言えるでしょう。
こうした、政府財源が届かず、企業活動では満たし得ない取り組みを寄付で支えることは、結果として、私たちの社会のイノベーションやアップデートを促すことにつながります。
また寄付による応援は、困難な状況にある当事者や、そうした当事者を支える支援者を励ます力を持ちます。
言ってみれば、「その取り組みは社会に必要だよ」と、応援して貰っているような感覚です。
こうして考えると、寄付とは「金銭以上の価値をも生むお金」であるとも言えると思います。
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しかし現場では、寄付先がわからない、あるいは誰に相談していいかわからないケースがあると言います。
また遺贈寄付の場合、比較的まとまったお金を扱うことから、上述した士業の方々や、金融機関のスタッフなどが、寄付者をサポートしているケースも少なくありません。
いわば「仲介する側」「サポートする側」が、遺贈寄付に関する知識、特に民間公益活動に関する理解が進んでないことは、日本の遺贈寄付を広がる上での大きな課題だと思います。
寄付者と直接コミュニケーションをする可能性がある仲介側・専門家の方々に、民間公益活動が果たす役割を理解頂くこと。
このことは、必要な資源を社会のすみずみに届ける観点からも、非常に大切なことだと思うのです。
今回お声がけ頂いた講座は、まさにそうした仲介側であり、専門家の方々を対象とするものでした。
初登壇の講座でしたので、難易度としてどの程度の知識レベルに合わせてお話するのが得策か、率直にいって手探りでした。
が、終了後数人の方とお話したところ、面白かった、分かりやすかった、と言って頂いて、ほっとしました。
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特に、来場されていた2人の士業者の方から言われた言葉が印象的でした。
お二人がお話下さった内容をまとめると
- 法律や仕組みの上での実務的な観点を知ることは、遺贈寄付に関わる士業にとって、とても大切なことだと思う
- しかしその資金が届いた先にどんな世の中の変化が待っているのか、実はあまり知らないし、実感がない。
- 自治体に寄付をすることと、NPOなどの民間公益活動に寄付をすることに、社会的な観点で見たときにどんな違いがあるのか?という点は、今まで掘り下げて考えたことはなかった
- 概念的なことや社会の中での位置づけと、実例との両方が聞けたのが収穫だった
と言って頂いたように思います。
(講義では、割と抽象度の高い概念論と、私が知る&今まで伴走したり、一緒に作りあげてきた実例の両方を話しました。なのでこういう反応だったのかな?と。)
そして改めて思いました。
やっぱりこの「そもそも論」(そもそもなぜ民間公益活動活動への寄付なのか?その流れが太くなることは、社会にどんな変化をもたらすのか?)を、寄付者と直接相対される方々に理解して頂くことは、とても重要だなあ、と。
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講座の会場では、日本承継寄付協会さん作成の、こんな冊子も配布されていました。
冊子の中では、私が理事としての役割も担っている公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンも紹介下さっていました。
なお、日本承継寄付協会さんでは、遺贈寄付の専門家への報酬を助成するキャンペーンを実施されているとのことです。
専門家への報酬を上限5万円まで助成することで、遺贈寄付を広げる糸口をつくろう、という趣旨のお取り組みとのことです。
こちらのキャンペーン、イギリス発祥の「Free Wills Week (Month)」を手本に実施されているとのこと。
詳しい内容はこちらへ。https://www.izo.or.jp/freewills/
2025年には団塊の世代がすべて75歳以上を迎えます。
「大相続時代の到来」なーんて、巷では言われていますね。
ではそんな時代に、民間公益活動はどう向き合っていくのでしょうか。
今までさまざまな省庁や自治体、政治家の方々とお仕事をする中で、「社会の激しい変化に、政策のアップデートを間に合わせることの難しさ」をつくづく感じてきました。
制度や政策とは、何か事象が発生し、ニーズが顕在化して初めてつくられるものだからです。
そしてそれは、議論と手続きの上に積み重ねられるものだからです(このことは、決して否定されるべきことではなく、民主主義という側面から考えると大切な側面を持つと思います。)
一方で、それでは対応が間に合わない社会課題は、世の中に溢れています。
「社会の変化と政策のアップデートとのつり合いを欠いた状態」とは、「税による再分配が十分機能していない状態」とも言い換えられると思います。
こうした現状を踏まえると、変化の激しい時代において、目の前の困りごとを柔軟に解決する意味でも、政策のアップデートを加速させる意味でも、民間公益活動の重要性は増すばかりだと思います。
そのためにはやはり、こうした活動への社会的な意義を理解頂き、そこに資源を流すことの意義を理解頂くことが欠かせません。
遺贈寄付でいえば、だからこそ、
- 遺贈寄付、特に民間公益活動に対する遺贈寄付の重要性を理解頂ける専門家を増やすこと
- その結果、包摂とイノベーション、チャレンジと説明責任のバランスを取りながら活動する民間公益活動に必要な財源が回る環境をつくること
は喫緊の課題なのではないかなと思うのです。
遺贈寄付の推進という、私たちの社会のこれからを考える上でも重要な取り組みに、微力ながら携われたことに感謝したいと思います。