【後編】「“初めての社会的インパクト評価”」-知っておきたい、大事なこと(学びの共有)
「初めての社会的インパクト評価」続いて後編です。
※長いのでINDEXを付けます。そして、記事を2つに分けますね。
前編から読みたい方はこちらをクリック。
==INDEX==
【前編】
●1:TOCやロジックモデルの大切さ
●2:SROI以外の社会的インパクト評価手法に対する目配せの必要性
●3:「評価から何を学びどう改善するか」という視点の必要性
●4:複数の評価手法の組み合わせや、定量的分析と定性的分析の組み合わせ
【後編】
●5:貨幣価値換算する際の妥当性の配慮
●6:評価の原則の理解(ご紹介)
●7:既にある知見の活用
●8:そもそも「社会的価値とは何か」に対する議論の必要性
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ではでは始めます。
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5:貨幣価値換算する際の妥当性の配慮
SROIは、「事業への投資価値を、金銭的価値だけでなく、より広い価値の概念に基づき、評価や検証を行うためのフレームワーク。社会・環境・経済面の費用と便益とを以て様々な活動による社会的インパクトを評価し、その社会的価値を適切に評価することを目指す。」ものです。
(改めて。SROIネットワークのウェブサイトをリンク)
SROIについては、「活動の社会的価値を貨幣価値に換算したうえで、投入した費用に対してどのくらいの社会的便益があったかを算出」する際に、その換算が妥当なのか、を丁寧に問う必要があります。代替指標を用いる際は特に、ですね。
ちなみにSROI
のガイドラインはこちら。
素晴らしいことに、世界でSROIを牽引する「
SocialValue UK」のサイトに、複数の言語の翻訳版が公開されています。日本語版は5
番目に。
TheGuide to SROI
http://www.socialvalueuk.org/translations-of-the-guide/
また慶応大学の研究成果も公表されています。
「「SROI」実施ガイドライン
SocialReturn on Investment:社会投資収益率)」(2014
年
3月)
http://tama.sfc.keio.ac.jp/sest/guideline-sroi.pdf
どんな社会的インパクト評価でも、実施する際には何らかの制約条件があることが殆どだと思いますので、姿勢として、どういう条件でそれを実施したのか、前提条件はなんなのか、という点を丁寧に説明することが大切なんだなと思いました。
それはネガティブなことではなくて、社会的インパクト評価は日進月歩の世界なので、一度やった評価をさらにバージョンアップさせていく、という姿勢を持つという意味でも重要なのではないか、と思った次第です。
(必ずしも社会的インパクト評価に限った話ではなくて、仕事とはそういうものなのかもしれない、とも思いますけれども。)
ちなみに、こんなレポートもあります。
SROI Myths andChallenges
(神話と課題)
http://www.socialvalueuk.org/app/uploads/2016/03/SROI%20Myths%20and%20Challenges_2016.pdf
こちらの記事がわかりやすいですね。
「
SROIを巡る神話に反論する
」
個別の評価手法を神格化すると、無批判になってしまったり、何か実現出来ないことがあると、要らぬ失望を抱き無用に批判的になったりするのだと思います。
それぞれの評価手法の強みや弱み、特徴を理解して、社会的インパクト評価に取り組む重要性がここからも理解できます。
●6:評価の原則の理解(ご紹介)
こちらもご紹介が出来なかったわけですが、改めて大切だと思ったのでシェアです。
(P13:
評価の原則)内閣府
WG
報告書から
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/social-impact-hyouka-houkoku.pdf
一言で「社会的インパクト評価」と言っても、分野や個々の組織・団体が実施する事業、また、評価の目的や利害関係者のニーズなどによって、
評価の実施方法や内容は多種多様なわけです。
(それは、ここまで読んで頂ければわかることだと思いますが。)
しかし、評価に対する信頼性や比較可能性を維持する上で、評価の方法に多様性を確保しながらも、一定のルールに則り評価を実施することが大切です。こうしたことを踏まえて、評価を実装していくことが大切なんだなあと、その重要性を改めて再認識しました。
●7:既にある知見の活用と更なる共有
既にこんなツールセットも作成されています。
G8インパクト投資タスクフォース 国内諮問委員会ウェブサイト
社会的インパクト評価ツールセット
http://impactinvestment.jp/2016/06/tool.html
こういった知見を活用すると、指標やロジックを立てる助けになりますし、より良い社会的インパクト評価につながりやすいですね。
●8:そもそも「社会的価値とは何か」に対する議論の必要性
社会的インパクト評価を実施する際に「そもそも社会的価値とはなんなのか」ということを突き詰めて考える必要性があると感じました。
つまり、単なる「変化・効果」を持って「社会的価値」と捉えるのは問題があるわけです。
「そのアウトカムはこの事業のアウトカムと言えるのか」ということを問うのと同時に、「それが社会的価値と言えるのか」ということを問うた上で、評価をすることが大切、そうでないと、不適切なアウトカムが、アウトカムとして盛り込まれる可能性がある、ということを認識した上で、評価をすべき、ということです。
そして、もうひとつ、最初に学ぶときだからこそ、「何が社会的価値なのか」は、その社会の文脈や文化、背景によっても異なる」ということも覚えておきたいことですね。
今回分科会にもご参加下さった、SROIネットワークの大沢さんは、「SROIは構造的にはとてもシンプルで、考え方のフレームワークとして気軽に使うこともできるし、それを核に緻密な評価の設計をすることもできるし、運用次第です」と仰っていました。なるほどなあ、と。
ひとくちに評価、といってもその必要性や使い方、タイミングで、組織にとって最適な形があるわけですよね。その視点を磨いていけると、意味ある評価(アカウンタビリティ向上、学習と改善)につながるのだなと、改めて認識を深めた次第です。
■おわりに
今回、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトのイベントにいらっしゃる、現場で汗をかいて試行錯誤されている皆さんが、どの程度今回のセッションに関心を持ってくださるのか、本当にドキドキしていたわけです。
当日はいつも以上に緊張していました。(いや、、、、実際にはどんな小さな発言機会だって、いつも緊張しているんですけども。。)
でも、結果から言えば、セッションは大盛況でした。椅子がなくなって、ETIC.や、分科会をサポートしてくださった
G-netのスタッフに急いで追加を持ってきて頂くくらい。
嬉しい誤算でした。
終わった後、とても多くの方から、社会的インパクト評価について、初歩がわかった、もうちょっと知りたいけれどどうしたらいい?と質問を受けました。
(ちなみに、登壇と重なっていて聞けなかったけれど、セッションを聞きたかったから教えてください、という方もいて、本当にうれしかった。私がどうこうということではなく、やっぱり関心高いんだな、と。)
本当に、みなさんが自分たちが生み出している社会的価値の可視化の必要性を実感されているんだなあ、と思ったわけです。
実際には、社会的インパクト評価の世界は奥深くて、私もまだわからないことだらけなのですが、こうやって少しずつ、知見を共有しながら、事業の改善に繋げる具体的な武器が増えていくといいなと思いました。
今回の分科会を企画してくれたETIC.
スタッフの皆さん、当日のややこしい進行をサポートしてくれたG-netのスタッフ、特に企画のコア役を果たしていた2人は新しいチャレンジで私以上にドキドキしていたと思います。お疲れ様でした!声をかけてくれて、本当にありがとう!