米国の助成財団の本気度。そりゃそれくらいのインパクト生み出せるよね、という話。
今回の一連の米国出張。
まだレポーティングの前なので、書けることが少ないのですが、訪問前に印象的だった先を中心に少しご紹介を。
ご紹介したい先の一つが「Edna McConnell Clark Foundation(エドナ・マコーネル・クラーク財団)」略してEMCFです。
EMCFが設立されたのは1960年代のこと。
民間会社AvonがIPOする時に得られた資金を原資に設立された財団です。
この財団の特徴は、団体の成長に必要な資金を
・長期的に(複数年に亘って)
・多額に
支援することです。
そして資金使途に制限を付けず、マイルストーンを設定しながら助成先をモニタリングする。
話を聞いていても、何となく慈善型財団というよりも、ベンチャー・フィランソロピーに考え方が似てるな、と。
(VPについては、こちらの過去レポートお読みくださいませ!)
より大きなインパクトを産みそうな組織を慎重に選んで、
多額の資金を思い切って投じ、
必要があればヒューマンリソースも提供するところが特徴的だなあと思います。
ヒューマンリソースの提供方法には2つのタイプがあって、
①助成先のスタッフの雇用に必要な人件費をEMCFが提供する(場合によっては人探しもする)
②外部リソースを助成先に提供する
パターンがあります。
②については、具体的にEMCFがコラボレーションしている組織も公開されています。
ひとつは「The Bridgespan Group」
ひとつは「MDRC」です。
The Bridgespan Groupは、日本でも時々紹介されているから聞いたことがある方もいるかもしれません。
コンサルティング会社のBain&Companyが設立した、非営利セクター向けのコンサルティングを専門に行う会社です。
MDRCはニューヨークにオフィスがある比較的老舗の非営利コンサルティング会社。
1974年にフォード財団の支援により設立されています。
どちらも非営利セクターのコンサルティングでは比較的大きく、よく名前を聞く会社かなと思います。
EMCFが音頭を取り、6つのGeneral Partnersと4つのLimited Partnersを集め作られています。
General Partnersっていうのは、助成先の決定権も持つタイプの資金提供者です。
Limited Partnersっは、そこまでの決定権は持たない、その代わりに資金提供額も少し少なめに設定されています。
Blue Meridian Partnersは、合計なんと10億ドルのファンドレイズを予定しているとのこと。
日本にいる私たちからすると、なんだかゼロを何度も数えてしまう規模ですね。
ただ、ここで思うのは、これを「海の向こうは凄い!」で済ませてはいけないな、ということ。
ヨーロッパやアメリカを訪問すると時折、「日本はコーポレートセクターの力が強いでしょ?なぜ彼らの力を使わないの?」と聞かれます。
確かにね。そうなんですよね。
Blue Meridian Partnersのような、助成財団や慈善組織が束になって、成果志向の複数年助成を行うって言う形は、とてもいいアイデアだなと思います。
なぜならば、プログラムを通じて、互いの知恵や経験を共有しあうことができるから。
自分も過去、複数の金融機関や助成団体が相互に知見共有する場づくりをしたことがあるのですが、机を「ロの字」にして向かい合って座って数分間プレゼンテーションしても、なかなか知見共有は進まない。
当たり前ですよね。どの資金仲介組織も、自分たちのプログラムを自分たちなりに考え抜いていて、そのプロセスに学びがあるのだから。
もちろんそうした場が無駄だとは思わないし、これからもっともっと大切になるだろうけど、それだけではなかなか資金仲介側のキャパシティビルディングやノウハウ共有は進まないと思うんです。
だから思い切って一緒にプログラムを作ると言うBlue Meridian Partnersの仕組みは、とてもいいなと思ったわけです。
金額が小さくても良いから、ひざ詰めでプログラムを作って学び合う機会を創る(そして助成先の活動をフォローし合う過程でも学び合う)。
そんなことが日本でももっと起きるといいなと、海の向こうの取組を見ながら思ったのでした。