後編:定着するか?Bコーポレーション 〜考えるべき4つのポイント〜
前編では、セミナー「Bコーポレーションを知る会」の様子をご紹介しました。
*前編記事はこちら http://blog.livedoor.jp/mizutanieri/archives/14070540.html
後編では、タイトルにもある「Bコーポレーションは日本社会に定着するか?」という問いを考えてみたいと思います。
制度や仕組みが定着するまでには、乗り越えなければならないハードルや、考えておかなければならない点がある。
1点目、現行の方法で、認証を取得する企業があと数十例登場すること。
2点目、その時に、先行的な取得企業像が多様であること。
4点目、政策的な観点からの連動や発信の取り組みを継続すること。
◆1:現行の方法で、認証を取得する企業があと数十例登場すること。
この場合の「現行の方法」とは、米国Blabから直接認証される手続きをさします。当然、対応言語は英語です。取り組んでいる事業についても、日本の文脈を理解し得ない担当者が対応することを想定しなければなりません。
シンポジウムでは、米国Blabから、今後もう少しBコーポレーションの認証数が増えた場合には、正式な日本ブランチの設立も夢ではなくなるとの発言があったと紹介されました。
実際日本ブランチが出来れば、多少のローカライズも可能になるでしょうし、日本の文脈で、その適切性を一定判断することが可能になります。
何よりも、企業側が日本語で認証の事務作業に対応することが可能になることが予想されます。
Bコーポレーションの認証取得企業は現在3社です。
こう考えると、想定されるのは、
そのためには、認証取得に関心を持つ経営者を開拓すること。
つまり、暫くは根気良く個別アタックや声かけが必要なのだろうなと思います。
◆2: その時に、先行的な取得企業像が多様であること
Bコーポレーションは、要するに前編で述べた基準への適合を問うているわけですから。むしろその区別は不要。
(但し、前編の冒頭で記載した通り、株式会社に代表される、営利に分類される法人形態でなければ認証審査の対象になりませんので、その点はご留意を。 )
逆に言えば、認証取得企業の像が固定化せず、 古くからある中小企業らしい中小企業も、自らが「ソーシャルな価値」を持っていると自認している新しい法人も、Bコーポレーションの認証取得対象であるというメッセージを発信することで、バラエティある認証取得企業が産まれることが、今後の広がりを考える上では大切ではないかと思いました。
(結局は、こういった仕組みは「これは自分たちのことだ」と考える人たちがどのくらい登場するか、ということに尽きますものね。)
◆3:認証取得の方法や実際のアクションが広く認知されること
今回、日本Bコーポレーション推進支援委員会さんは初めて東京でセミナーを開催されました。
「Bコーポレーション」という概念は、日本ではまだまだ知られていません。
従って、実際に認証を取得しようと考える企業さんが突然降って湧いてくることは無いと思います。
しかし、今回のイベントのように、広い認知⇔個別声かけの繰り返しはやはり必要。
となれば、「誰に何を聞いたら具体の取得プロセスのイメージが理解できるのか」
が、ウェブサイトなどに集約されて、乗り越えるべきハードルがクリアになっているといいな、と。
そして実際のアクションが提示されていることは、行動の誘引や具体化には不可欠だと思うのです。
ちなみに、今回のセミナーでは、登壇された3社さんに、認証取得に必要だった期間をお伺いしました。
結果、最長のケース(日本初の取得企業=シルクウェーブ産業さん)で8か月、最短のケース(フリージア株式会社さん)で3か月、というご回答をそれぞれ頂きました。
こうしたタイムスパンや実際に必要な労力のイメージがつくことが、経営者の方が取得へのチャレンジを判断する上でとても大切ですね。
もちろん、正確に見積もることは難しいとしても、まず先行例ではどのくらい、労力が必要だったのかわからない限りは、取り組む・取り組まないも判断がつきませんから。
(※ただ、やはり業種業態によっては、きわめて日本的な文脈を有しているケースも考えられ、その場合は拝啓情報や文脈理解に時間がかかる可能性はあるかな、と。)
◆4:政策的な連動・発信の取り組みを継続すること
経済産業省では、昨年度から、「地域を支えるサービス事業主体のあり方に関する研究会」を継続開催、研究会の報告書も公開されています。(以下からDL可能)
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160420003/20160420003.html
この研究会では、「地域の持続を支えるサービス事業主体を取り巻く形態のあり方、法人制度等について」研究がされています。
この検討が直接的にBコーポレーションやBenefit Corporationの成立に連動するとはあまり思いませんし、
日本の現状から、Benefit Corporationの存在意味や必要性がどの程度あるか、冷静な議論が必要かと思います。
ただ、こうした議論の下には、やはり今の日本の地域の抱える問題が隠れているとは思うのです。
(なお、経済産業省の検討は継続しているものの、今後の展開可能性については未確定要素が多い状況なのかな、と思います。)
G8社会的インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会でも、同種の議論を継続してきました。(そもそも委員会の位置付けが「社会的インパクト投資拡大に資する制度・政策の提案」なので、投資対象を拡大させたり、投資しやすい法人形態のあり方、という視点が強くはありました。)
多少視点・観点は違っても、どの立場も新しい仕組みや枠組みの必要性を感じたからこそ、こういう検討がなされているのだと思います。
あとは互いの検討状況や進展、考え方を意見交換し、すり合わせるプロセスが必要になりますね。
※なお、セミナーの中では、「Bコーポレーションの認証取得企業が、Benefit Corporationの制度を持たない州に立地していた場合、本拠を移動することで、税優遇を受けることを目指すケースがある」というご発言もありましたが、現実に日本の中小企業の例を考えた場合、愛着ある本拠地を容易に移動することは考えにくいと思いました。東京23区内での事務所移動であればともかく、ですが。
したがって、自治体単位でのチャレンジングで先行的な取り組みが出てくるといいなあ、大切だなあと思いつつも、国全体の仕組みを同時に考え、目配せする視点も大切だなあと思います。
以上、セミナーから考えた、Bコーポレーション・Benefito Corporationが日本に定着する上で重要だと思うこと、4点でした。
Bコーポレーションの今後、楽しみです。