政策提案は膨大な事務の積み重ねの上にあるということ。
先日、ご支援しているNPO法人スマイルスタイルの全体合宿に同席させて頂きました。
(団体のウェブサイトはこちらhttp://smilestyle.jp/)
年に4〜5回ほど開催されているこの合宿。
毎度社外のファシリテーターも呼び、スタッフの意識共有を続けているとのことです。
合宿は、広がり続ける事業領域・事業部門を横断的に繋ぎ、個々のスタッフが目標設定する時間として機能しています。
(と初めて参加した私は理解しました。)
◆私自身の関わり
私自身は、スマイルスタイルが取り組む「ハローライフ構想」の実現を支援する立場にあります。
スマイルスタイルの実践に伴走し、プロジェクトの精度を高め、政策提案や実現に繋げることが、私に課せられた役割です。
もちろん、その過程で、スマイルスタイルのスタッフの力量形成を行うことも、私の役割です。
(と感じながら日々の伴走にあたっています。)
◆あるスタッフの発言
この研修会の中で、私と共に行動してくれているスタッフがこんなことを言っていました。
「政策提案が出来るのは、現場のオペレーションが回っているからだ」、と。
この発言をした彼は、私が関わらせて貰ってる「ハローライフ構想」の、中核的なプロジェクトを担う当事者です。
なかなか考えさせらる一言でした。
私自身は、彼らの日常的なオペレーション全てを理解し・把握出来ているわけではありません。
四六時中同じ場所にいるわけではありませんから。
しかし、本案件が大きな受託事業も含むこと、ステークホルダーが相当に多様であることから考えると、日々のオペレーションは相当手がかかり、消耗する局面もあるだろうことは容易に想像ができます。
(なぜならば、そういう立場に自分自身もなんども立ったことがあるからです。
シンクタンクの研究員というと、知的なイメージがするかもしれませんが、実際は現場と政策の上流に挟まれ、もがき続けながら、与えられた条件の中で最適解を何とか獲得しようと腐心しているケースが殆どです。)
その中で出てきたこの言葉。
彼の本心だと感じましたし、改めて、考えさせられるものがあったのでした。
◆現場があるからこその政策提案
彼は、私からの伴走支援を受けることで、経験したことのない学びや気づきを得ている、と言ってくれました。私にとっては最高の誉め言葉です。
※「支援」という言葉に上下関係を喚起させる響きがあることは理解しつつ、プロフェッショナルなスキルを提供する立場として、責任をもつ意味で私はこの言葉を使います。
ご支援をすることで、対価を得ている。
そういう緊張感を常々感じている上で、このようにも思います。
コンサルタントとしてどんなにスキルがあったとしても、政策提案は現場の試行錯誤があるからこそ出来ることだ、と。
その意味では彼が言っていること(=日常業務を遂行しているメンバーがいるからこそ提案が出来るという発言)は圧倒的に正しいと思いました。
◆「凄そう、遠そう、大変そう」?
いつだったか、社会起業塾やCFCでご一緒しているIIHOEの川北さんが、「運動は事務の堆積」という市川房江さんの言葉を教えてくださいました。
私は川北さんから聞いたのですが、市民活動における、事務局機能の大切さを説く時に、しばしは引用されるフレーズです。
私自身もとても共感します。
政策提案などと言うと、「凄そう、遠そう、大変そう」、という反応を頂くことがあります。
大変なのは事実なので(笑)最後の1つは別として、前者2つは当てはまらないと思います。
提案内容はある日突然頭の中に浮かぶものではありません。
空の上から降ってくることは無いですし、誰かから与えられることもありません。
むしろ、現場で出てきた気づきや違和感、失望や成功体験からしか、有意な提案は出来ないと感じます。
もちろん、現場をやってさえいれば、提案が出来る実力がつくわけではありません。
もしそうだとしたら、私のような存在に価値はありませんから。
◆「少しだけ先」のボールをトスする
人間は、そして組織は、変えること、変わることを本能的に拒否する存在だと言います。
だからこそ、提案を重ね仕組みを変えるのであれば、現場で得た気づきやリアルな体験を言語化すること、あるいは気づかれていないが存在する不具合を可視化することがとても大切だと思います。
具体的でリアルな話はやはり強いですし、提案を受ける側も薄々気づいている不具合だったりすることも多く、現実感ある提案は相手を動かすエネルギーになります。
運良く、ビジョナリーなトップに出会えた時は別ですが、セオリー的には半歩だけ先の、納得感があり飛び過ぎていない、でも今出来ていないことを伝え、動かしていくことが肝なのだと思います。
政府や大きな組織を相手にする時には特に。
しかし、リアリティある提案は、伴走を続け、話を聞き続けていないと、見えてきません。
だからこそ、「現場で出てきた気づきや違和感、失望や成功体験」を共有してもらえる信頼関係や、ストーリーを聞きながらある程度の抽象化をし、大づかみで良いから「それってこういうこと?」というボールを投げるスキルが大切なのだと思います。
長くなりましたが、書いてみれば、つねづね感じていることばかり。
あるスタッフのつぶやきを通じて、改めて
「自分が提供できる価値は何か」
「自分は何の上に立っているのか」
を考えた一瞬を手掛かりに、思考を深めてみました。